伝統的建造物の特徴と見どころ

更新日:2025年03月31日

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伝統的建造物の類型別残存状況

伝統的建造物群保存地区を含む龍野地区内には、伝統工法による築50年を経過している建物が多く残存しています。そのうち、町家が全体の約80%を占めており、他には龍野の地場産業である醤油関連施設、高塀と門構えが特徴である屋敷型住宅、寺院、神社、洋風住宅、土蔵などに分類されます。

伝統的建造物の類型別残存状況の位置図
類型別残存状況の表

町家の外観意匠

龍野城下町には、18世紀中頃から昭和初期にかけて、その間約250年間にわたる各年代の町家が連続的に現存しています。

敷地の間口いっぱいに建つ主屋は、切妻造、平入を基本とし、近世は、ツシ2階建(中2階)の低い建物が主でしたが、明治中期以降には軒高が4.5メートル以上の本2階建てのものが多くなりました。

また、町家の屋根瓦についても、桟瓦の登場は明治初期であり、それまでは本瓦が主流だったことが保存調査で分かっています。瓦の葺き替え時に本瓦から桟瓦へと取り替えられた町家も多いと考えられますが、本瓦を今なお残す町家は、おおむね前近代の建築であると推察できます。
町家の軒高と年代

左は明治初期の町家、軒高が4.5メートル以上と書かれた2階建ての明治初期の町家、右側は軒高3メートル程度と書かれた江戸後期の町家のイラスト
瓦屋根の厨子二階建ての家に、玄関と窓に木の格子がはめられている歴史を感じる家の外観写真

江戸時代築の町家(ツシ2階)

道路側に面した2階建ての和風造りの窓や玄関が残っている明治時代の町家の外観写真

明治時代築の町家

丸瓦と平瓦を交互に積んだ本瓦葺きの屋根瓦の写真

本瓦葺きの屋根

波型の瓦を積んだ桟瓦葺きの屋根瓦の写真

桟瓦葺きの屋根

一階の外観形式

龍野の町家は、一階の外観形式で、出格子を持つ形式のもの(Aタイプ)、成(背)の高い平物を渡して表側を開放できる形式のもの(Bタイプ)、タイルや石張りの腰壁を持つ形式のもの(Cタイプ)のおおむね3タイプに分類することが出来ます。

また、それぞれのタイプで改造が行われており、改造も含めると3系統7タイプにも分かれます。

特にBタイプでは、腰壁や格子窓の新設などの改造が高頻度に行われており、その多くは店を閉じる際、不必要となった表開口の閉鎖が意図されたものと考えられています。また、大正末期から昭和20年前半に改造が集中しています。この時期に新築された町家の多くがCタイプであり、Aタイプ、Bタイプの改造後の外観形式と類似しています。

Aタイプ:出格子を持つ形式のもの、Bタイプ:成の高い平物を渡し、表側を開放できる形式のもの、Cタイプ:タイルや石張りを持つ形式のものの3種類の1階外観形式のイラスト

二階開口部の種別

龍野の町家は、その二階開口部の形式によって4タイプに分類されます。

これらの形式を参考にすることで、おおよその建築又は改造の年代を推察することができます。

1.虫籠窓、金属格子を持つ形式

虫籠窓(むしこまど)

漆喰で塗籠られた窓で、18世紀の町家に見られ、保存地区内で最も古い形式です。

高さを抑えたツシ2階に、通風や採光を目的として設けられました。龍野では、木瓜型や矩形型と呼ばれる形状の虫籠窓を設けた町家も見られます。

屋根の下の窓に長方形に白の土壁を厚く塗り縦格子になっている虫籠窓の写真

虫籠窓(矩形型)

窓に木瓜型に白い土壁を厚く塗った虫籠窓の写真

虫籠窓(木瓜型)

金属格子

龍野の二階開口部の特徴的なもので、漆喰枠の開口部に金属製の格子がはまっています。

第二次世界大戦中の金属供出等により木製格子に変わっている町家も見られますが、江戸期から昭和初期にかけての町家では、鉄製の丸棒が使用されています。通風や採光を確保しながら防犯対策のためであったと思われます。

窓枠に金属格子が設置された様子をアップで写した写真

金属格子

白い木枠に囲まれた窓枠に黒色の縦格子がはめられている木製の格子の写真

金属供出により木製に変わった格子

2.木製の出格子を持つ形式

19世紀初期の町家に見られる形で、1.の虫籠窓と並列的に用いられてます。

2階建ての窓の外に茶色の木の柵に格子が設置された木製出格子の写真

木製出格子

屋根の下の窓に黒の太い木と細い木の格子がはめられた木製出格子の写真

太格子と細格子の組み合わせのもの

3.金属製の出格子を持つ形式

金属格子を用いた出格子は、古いものでは安政4年(1857年)の町家に見られる形式であり、この形式もほぼ同時期のものです。1.の金属格子と同様に供出等により木製格子に変わった町家も見られます。

2階の窓に白の枠があり丸い金属で造られた格子がはめられた丸格子の写真

金属製の丸格子を持つ出格子

白の枠で囲まれた2階の窓に丸い格子がはめられている洋風な出格子の写真

洋風な見た目の出格子窓

4.戸袋付きの窓、ガラス窓を持つ形式

雨戸を戸袋に引き込む方式は、明治初期以降の町家に見られます。また、大正から昭和にかけて、小さなガラスを割付して木枠にはめ込んだガラス窓(お多福窓)が登場しました。

雨戸を収納する木の戸袋付きが設置された2階のガラス窓の写真

戸袋付きの窓

窓が長方形に7分割された格子が設置され、ガラスがはめ込まれているお多福窓の写真

お多福窓

その他の見どころ

袖卯建(そでうだつ)

隣家からの延焼や屋根伝いによる侵入を防ぐための役割があり、装飾的な意味合いも見られます。

2階の外側の端に仕切りのような壁が取り付けられた卯建の写真

卯建

隣接した民家との間の2階の家の白壁の端に仕切りが取り付けられた卯建の写真

卯建の幅、意匠も物件で様々

軒蛇腹(のきじゃばら)

龍野の町家は2階軒裏が複雑な曲線(繰型)でデザインされたものが多く、階段状のものや円弧を描いた洋風のものまで、多彩なデザインを見ることができます。

家の屋根の下の軒が階段を逆さまにした様な形をしたデザインが施された軒蛇腹の写真

階段状の軒蛇腹

家の軒下がアーチの様なデザインが施された軒蛇腹の写真

円弧を描いた洋風の軒蛇腹

持送り・腕木(もちおくり・うでぎ)

壁や柱に取り付けて、庇や梁などの突出部を支える横材のことです。直角三角形に似た形状のものを持送りと言い、一本棒状のものを腕木と言います。

真っ白な軒裏の角に三角形の形状の物で支ええている持ち送りの箇所を黄色で囲んでいる写真

漆喰塗り仕上げの持ち送り

軒裏に柱や梁などに直線に伸びた横材が設置された腕木の写真

腕木

駒寄(こまよせ)

本来は、馬や牛を繋ぎ止めておくためのものであったと言うことですが、今日では、軒下に人や犬が立ち入ることを防ぐために設けられています。龍野では、削り跡を残す日本古来からの加工技術である名栗(なぐり)仕上げのものが見られます。

家の敷地内に塀のように設置された腰くらいの高さの角材の柵が設置された駒寄の写真

駒寄

家の敷地内に塀のような削った跡を残した角材の柵が設置された駒寄の写真

名栗仕上げの駒寄

高塀(たかべい)

塀の存在感を強調し、屋敷の格式を高めるための塀です。格子窓を開けたものや、虫籠窓を付けて町家の外観のように仕立てたものなど、龍野には多彩な高塀があります。

高い塀の下には木材が使われ、上は2色のグレー色で四角い形をした木材の窓がはめられ、塀の上には瓦が載っている塀瓦の高塀の写真

高塀

高い塀の下部に木材が使われ、上部は白壁の2色でひし形をした木材の窓がはめられ、塀の上には瓦が載っている塀瓦の高塀の写真

窓を設けた高塀もある

建物ごとに様々な意匠があり、多様なデザインを持つ町並みは龍野の魅力の一つです。たつの市龍野伝統的建造物群保存地区パンフレット「龍野の町並み」を参考に、お気に入りのデザインを探してみてください。

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